「類は友を呼ぶ」という言葉通り、経理関係の仕事に就いて以来、個人で事業を始めようとする人や法人を設立しようとする人達と接する機会が増えました。

そんな人達からよく聞かれる事があります。それが「個人事業主と法人って、どう違うんですかー?」です。

感覚としてはナンとなく分かっているけど…。っていうケースが結構多いんですよね。「ナンとなく分かっているけど」っていう、その感覚。まさに分かります(笑。

では、「ナンとなく」ではなく、「具体的な違いについて」いくつかお伝えしたいと思います。メニューは下記でいきましょう!

  1. 法的な立場(責任)
  2. 開業する際の手間とかかるお金
  3. 税体系
  4. 社会的信用度
  5. 確定申告の難易度
  6. 管理義務
  7. 経費計上出来る内容
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1. 法的な立場(責任)が違います

個人事業主は、事業主本人が主人公です。事業主本人が責任を負って事業を展開します。それに対して法人は「法人格」という、法律で認められた人(会社)が主人公です。事業の責任も事業主本人ではなく、法人が負います。

分かりやすい例を挙げますね。事業に必要なお金を借入れたとします。個人事業主の場合、事業主本人が主人公なので事業主本人の借入れとなります。順調に返済すればそれで良し、もし事業が失敗してしまい返済が出来なかった場合は、事業主本人の貯金を充てるなり、私財をお金に換えたりして返済しなくてはいけません。

法人は、法人(会社)が主人公なので法人の借入れとなります。返済は法人が所有する財産の中で行います。法人代表者の貯金や私財を返済に充てる必要は基本的にありません。(一部、例外はあります)
このように、「誰が主人公なのか」「誰が事業の責任を負うのか」これらが決定的に違うのですー。

2. 開業する際の手間とかかるお金が違います

個人事業主で事業を始める場合

  • 「個人事業の開業等届出書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後1ヶ月以内に提出(無料)。
  • 「所得税の青色申告承認申請書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後2ヶ月以内に提出(無料)。
  • 「給与支払事務所等の開設届出書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後1ヶ月以内に提出(無料)。

上記の書類を、届け出ればOKです。各用紙は税務署にあり、それぞれ書く内容も簡単。事業を開始する費用はほとんどかかりません。

法人で事業を始める場合

  • 定款を作成し、公証役場[*1]で認証(有料)を受ける。定款とは、会社の「解説書」のようなもの。
  • 法人登記をする。開業する事業所(本店)の管轄法務局へ申請(有料)する。登記とは、会社の「戸籍」のようなもの。

↓↓登記が完了後

  • 「法人設立届出書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後2ヶ月以内に提出(無料)。
  • 「青色申告の承認申請書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後3ヶ月以内に提出(無料)。
  • 「給与支払事務所等の開設届出書」という書類を、開業する住所の管轄税務署へ事業開始後1ヶ月以内に提出(無料)。

上記のように、定款の作成&定款の認証&登記&各種届出が必要です。定款の承認を受けて登記の申請をするまでにも期限があるので、期限内に処理する必要があります。

法人設立までに要する日数は設立する法人の規模や内情によりますが、2週間~1ヶ月くらいでしょうか。設立費用は最低でも約30万円くらいはかかるでしょう。

事業を開始する手間と費用だけを見ると…個人事業主の方が圧倒的に手間要らず&金要らずですね^^;

[*1]公証役場とは…各種公正証書(遺言、離婚、養育費、慰謝料、定款など)の認証をする官公庁。公証人という役人が執務している。

3. 税体系が違います

個人事業主でも法人でも、得る所得によって税金が発生します。簡単に言うと、利益が少なければ個人事業主が有利で、利益が多ければ法人の方が有利と言えるかと思います。

これは税率が違うからですね。
個人事業主は、5%~40%くらいの所得税がかかります。法人は、15%~26%くらいの所得税がかかります。最小値と最大値が違うでしょ?ここですね。

もう1点、大きな違い。個人事業主は赤字であれば課税されません。法人は赤字でも最低限の納税(法人税の均等割[*2])があります。

自治体によっては独自の税金を設定していたりもするので、僅かに納税額が違ったりもしますが、平均7万円くらいの納税が発生します。

[*2]均等割とは…所得金額にかかわらず定額で課税される種類。所得額(所得0円含む)によって定額の納税が設定されている。

4. 社会的信用度が違います

個人事業主は「今日から事業を始めます!」と半ば宣言すれば費用がなくても事業を開始出来ます。一方、法人は上記にも書いたように設立するまでに手間と時間と費用を要します。

法人の方が、法的な手続き処理が必要でそれをクリアして設立に至っており、更に設立後も色々な管理義務もあるので、その点だけ取っても相手(特に金融機関や企業)の信用度は違ってくるでしょうね。

街の定食屋さんやラーメン屋さんで個人事業主が多いのは、相手先は一般のお客さんであり、店が衛生的で味が良ければ、それが「信用」に繋がるので、企業間と取引するケースとは違ってくると思います。

取引先が企業であれば、個人事業主としてより法人の方が圧倒的に信用度に差は出てしまうかと。個人事業主でも、すでに取引先と十分な関係値を築けている中であれば、信用度に見劣りを感じる事は無いかもしれません。

5. 確定申告の難易度が違います

個人事業主として確定申告をする場合、超簡単!とは言いませんが、頑張れば本人でも申告は出来ると思います。実際、事業主本人が確定申告をしているケースは少なくないようです。

しかーし!法人の確定申告(決算)は…税理士の資格を持っている場合は別ですが、素人だと、、かなり難しいです。というか…出来ないと思います(笑。申告する書類や種類が多岐に渡るので、とても手に負えないでしょうね。。法人の確定申告は、費用を支払ってプロの税理士に任せるのが安全だと思います。

6. 管理義務が違います

個人事業主は、書類の管理など厳しい制約は特にありません。法人は色々と管理の条件があります。書類1つ取っても、必要な書類を揃えておく必要があるし、書類の種類によって保管義務(会社法:10年/法人税法:7年)も決められています。

7. 経費計上出来る内容が違います

個人事業主と法人では、経費計上の条件に違いがあります。優劣という意味での違いでは無いのですが、節税対策は法人の方が有利だと思います。

まとめ:どんな事業をどういう形でするのか?を把握し、それに合った事業体系を選ぶ

個人事業主と法人の違いについて、7つ書きましたが~これが全部ではありません。そして、この違いは「優れている、劣っている」という事ではないのです。

ご自身が、何を商材にしてどんな規模でどういう方向へ事業を展開したいのか?!を、先ずは把握して欲しいです。それに合致すると思う事業体系を選ぶのが大切だと思います。

個人事業主で事業を始めて、どこかの時点で法人を設立(法人成り)する人達だって沢山いらっしゃいます。

未来を完全に予想し言い当てる事は、難しいですが、「最初が肝心」というように、しっかりイメージして下さい。これは他人から押し付けられるものではなく、自分の人生に直接関わる出来事なので、大変かもしれませんが~同時にダイナミックで楽しい作業でもあると思います^^