今回のタイトル、「え?どっちがお得って・・どゆ事?」って声が聞こえてきそうでもあります。
確かに、そうですね。
どっちが得で損か?とかではなく、基本的に法人は社会保険(健康保険/厚生年金)に加入しなければいけないですからね(笑。
いけないんですが・・・
加入しなければいけない全法人が加入しているか?というと、そうではないのも事実です。
加入してない理由や事情は、それぞれあるでしょう。
今回、私は日本年金機構の代弁者となって、社会保険(健康保険/厚生年金)の加入の是非を問うためにこの記事を書くワケではないので(笑、それらの理由を深く掘り下げるつもりはありません。
今回の記事を届けたいターゲット、一人法人さんに向けて書きます。
正確に言うと~
「その法人から役員報酬を得ていて、国民健康保険と国民年金を納付している一人法人さん」ですね。
※社会保険とは健康保険と厚生年金がセットになった保険制度です。
下記の本編からは「社会保険」のみの名称で書きますが、健康保険と厚生年金が含まれていると思って読んで下さいね。
まずは、社会保険の加入条件から確認してみよう
一応、確認事項という事でね。
冒頭、『基本的に法人は社会保険に加入しなければいけない』と書きました。
『基本的に』なので、社会保険の加入対象となる条件があるんです。
- 役員を含む従業員がいる法人
- 役員に報酬を出している法人
- 常勤の従業員に給与を支給している法人
です。
上記3つの項目に当てはまらない法人は、社会保険に加入する対象から外れます。
今回、私がこの記事を書くターゲットを「その法人から役員報酬を得ていて~~~~一人法人さん」と書いたのは、そういう意味です。
報酬を得ていない一人法人さんは、社会保険に加入する対象から外れるので、この記事を書く必要がナイんですよね。
※3番目に記載した「常勤の従業員に給与を支給している法人」について、何を以って「常勤の従業員」なのか?は、定められた規定がありますが、今回の記事では詳細を割愛します。
加入対象が違う!社会保険と国民健康保険&国民年金
これから書き進める上での参考になるので、社会保険と国民健康保険&国民年金の違いについて触れておきます。
まず、加入対象が違うんです!
国民健康保険&国民年金は、《加入者本人》が対象です。
それに対して、社会保険は《法人》が対象なんです。
社会保険には加入対象となる条件がありますよね。その条件から外れていれば加入する必要が無いというのは前項で書きました。
なら、報酬を得ていない役員や非常勤の従業員はどうするのか?
別の会社で加入対象となる収入を得ている場合は、その会社で社会保険に加入する形になりますよね。それも無い場合は、国民健康保険&国民年金に加入します。加入者本人が対象なので。
日本は、国民皆保険制度(国民全員が何かしらの健康保険制度に加入している事)を敷いている国ですから、いずれかの健康保険に加入する事になります。
算出基準が違う!社会保険と国民健康保険&国民年金
前項で、2つの保険制度の加入対象が違うと書きましたが、これって・・場合によってはチョッと面白い事になるんです。
国民健康保険&国民年金は、加入者本人が対象です。
加入者本人が前年得た所得から計算されて、国民健康保険料の金額が決まります。国民年金は定額なので所得に関係ありません。
もし、加入者本人が複数の所得を得ていたとしたら、それら全所得が集計(確定申告)され~そこから国民健康保険料の金額が決まります。
一方、社会保険は加入対象が法人なので、社会保険の算出基準となる金額は、その法人で得た報酬のみなんです。
もし、他でも収入を得ていたとします。その収入は社会保険の算出基準となる金額に含まれないんです。
どうして?!
社会保険は、《法人》が対象だからです。その法人で発生した報酬のみに対して保険料が算出されるんです。
なので、他で何か収入を得ていても、その収入は法人から出たものではないから、含まれないんです。
社会保険と国民健康保険&国民年金の面白い違いをシュミレーションしてみる!
ここで実験というか、実際に私の知人の例を取って紹介してみたいと思います。
私の知人・・・
- 法人を経営している
- 一人法人
- その法人から報酬を得ている
です。
そう、今回書いている記事のターゲットに入ってます。
とはいえ、その知人に向けて書いているのではありませんけどね。なぜなら、その知人はすでに社会保険に加入しているので。
話を続けます。
知人、今年(2017年)社会保険に加入しましたが、それまで加入していませんでした。
理由は、資金繰りの面で不安を感じていたからでした。
社会保険に加入すると、健康保険と厚生年金、どちらもかかる保険料の半額を会社が負担する事になります。社会保険は一旦加入したら脱退する事は出来ません。会社が倒産したら別ですが。。
決して余裕ある資金繰りでは無かったので、会社に半額の保険料を負担させたくなくて国民健康保険&国民年金を納付していたそうです。
知人は、自分の法人で報酬を得ていましたが、それとは別に、違う会社でも非常勤のスタッフとして毎月数万円の給与を得ていました。(その会社では社会保険の加入対象外です。)
ある日、知人はふと思いました。
「俺の法人って、俺一人だ。今、俺は国民健康保険料&国民年金を納付しているが、もし社会保険だったら、保険料っていくらになるんだろう」と。
純粋に保険料を比較してみようと思ったんですね。
要するに・・・その時ヒマだったんでしょうね(笑。うそうそ。。
知人、計算してみました。
結果は下記の通りとなりました。
おおよその金額(調べた当時)で書いちゃいますね。
それぞれの保険料比較です。
- 健康保険料:社会保険の方が17,000円安い
- 年金:国民年金の方が41,500円安い
これ、本人負担にしてみます。
- 健康保険料:社会保険の方が30,500円安い
- 年金:国民年金の方が28,500円安い
となったそうです。
いかがでしょう。
チョッと面白い感じになってませんか?
知人の場合、社会保険に加入した方が、本人負担が2,000円安かったんです(笑。
これ、どういう事なんでしょう?どっちも同じ健康保険と年金なのに。
先ず、保険料そのものの計算方法が違うというのと、加入対象の違いというのもあると思います。
本人の全収入を基準に算出される国民健康保険料、その法人から得ている報酬のみを基準に算出される社会保険。
場合によってはこういうケースもあるんですよね~。
会社が半額負担する社会保険、本人が全額負担する国民健康保険料&国民年金
さて。
前項で書いたように、知人の場合については、社会保険に加入した方が本人負担が安くなるという結果になりました。
しかし、知人はこれで「やった~!」と素直に喜べませんでした。
そう、確かに社会保険に加入した方が本人負担は減りますが、社会保険に加入したら・・半額の社会保険料を会社に負担させる事になるからです。知人がそれまで社会保険に加入しなかった理由がそこにあります。
社会保険の加入対象の条件に入っていながらも、社会保険に加入していない一人法人さん、知人と同じ理由の法人さんも少なからずいらっしゃるかもしれません。
ここをどう考えるか?でしょうね。
これ、日本年金機構の人が読んでたとしたら「いやいや、『ここをどう考えるか?』とかではなくて~加入条件に入っているのだから加入して下さいっ!」って言われますね(笑。
でも、私、、冒頭にも書きましたが、日本年金機構の代弁者として書いているワケではないので、あえて書きます。
ここをどう考えるか?でしょうね。と。
先ず、それぞれの保険料を比較してみてはどうでしょう~か!?
私の知人のように、社会保険に加入するしないではなく、純粋にそれぞれの保険料を比較してみる。ヒマな時に、、いや、チョッと時間を作って。
年金については、恐らく国民年金の方が安い人が多いと思います。国民年金は定額ですからね。厚生年金は、収入に応じて年金保険料が違います。
もし!もしですよ?
国民年金保険料と同じくらいの厚生年金保険料という事になると、、本人がその法人から得ている報酬は、10万円未満になると思います。
この金額の報酬なら、恐らく健康保険料も社会保険の方が安いでしょう。
「つか、その報酬少なくね?!」って、そこは色々あると思いますが、、とにかく、比較してみるのは悪くないと思います。
法人に対する社会保険加入の通告、以前より厳しくなってきてるのも事実です!
そもそも加入対象となる条件に入っているなら、社会保険に加入する決まりになっているので、加入の通告が厳しくなるのは当然といえば当然なんでしょうけどね。
法人を設立して2年目くらいまでは、日本年金機構から法人宛てに加入を求める動きってあまりナイと思います。3期目になると、加入の有無を確認する書類が郵送されてくるケースが多いみたいですね。
その書類が数通届いて、それをスルーしていると色付きの用紙で「来所通知書」なるものが送られてきます。読んで字の通り、管轄する年金事務所に来て下さい。という内容の通知書です。これもスルーすると、もう一度くらい来所通知書が届くか?もしかしたら、法人のある住所に年金事務所の職員が調査にやって来る場合があるようです。
社会保険の方が国民健康保険料&国民年金より優れてるのか?!
健康保険は同じだと思います。
それぞれの保険を管轄する機関が違ったり、保険料の計算方法や加入条件に違いはありますが、どっちかが優れているという事は無いと思います。
保険の中身は同じですが、前項で書いたように、保険料の金額や負担する割合などに違いはあります。
年金は、違いますね。
国民年金は、基礎年金です。厚生年金は基礎年金(国民年金)を含めた2階建ての年金なので、2階に当たる分がある厚生年金の方が、国民年金より多く受給出来る資格があります。
結局、社会保険と国民健康保険&国民年金、どっちがお得なの?!
今回のお題に戻ってきました。
どっちがお得か?というのは、皆さんそれぞれ事情が違うので、一概に「こっちがお得!」と言えません。
ですが、加入対象としての条件に入っている法人であれば、日本年金機構から加入を求められるので、この課題から逃げる事は出来ません。
私が今回、法人ではなく一人法人に向けてこの記事を書いたのは何故か。
一人法人なら、もし社会保険に加入したとしても、会社が負担する保険料の半額分について、資金繰りの面で色々調整したり工夫したりする事が可能だと思ったからです
前項で登場した知人ですが、その知人は社会保険に加入後、必要に応じて毎月の経費をすぐに精算せず、法人口座の残高を数ヶ月見てから精算したりしているそうです。
加えて、減った本人負担のお金も使わずに暫く貯めているそうです。何か必要があれば、「社長からの借り入れ」として法人口座に入金する事も含めて。
そういう苦労をしなくても、資金が回るのであれば、それが一番良いですけどね。多くの小規模法人は、資金繰りに日々苦労や工夫をしていると思うので、もし社会保険に加入するとなった場合、資金状況によってはこういった事も考えるのかなって思います。
ところで年金って・・俺達貰えるの?
私自身、これについては大いに疑問であり心配であり、半ば諦めていたりしている部分もあります(笑。
年金、、私達って貰えるんでしょうかね?!
かなり悲観的な見方をしている方々が大勢いらっしゃるとは思います。受給金額も減り、受給年齢も引き上がり、明るいニュースを目にしない年金。
貰えるか貰えないか、疑問や不安になっているこの年金、毎月何万円も納付する事に消極的になってしまいますよね。
でもね、、現状は納付していくしか仕方ないですよね。。
だって、年金制度・・・現状生きてますから。今受給されている方々がいらっしゃいますからね。制度として生きている以上、納付するしかありません。
若い頃は、年金の存在は知っていても、自身が受給する事なんて微塵も考えていませんでした。それだけ年齢を重ねたという証拠ですね(笑。
まとめ
かなり長文になりましたが、2つの保険制度について概要や違いなど、私なりに気付いた事を書いてみました。知人の例など、同じような状況の方もいらっしゃるかもしれません。これについてはかなり検討の価値があると思います。
社会保険に加入しても、法人の資金が回るようであれば、会社が負担する保険料について全額損金計上が可能なので、節税対策の一助となる面もあります。
また、年金事務所に行って色々相談してみるのもアリかもしれません。
年金事務所は社会保険の加入を求めてきますが、こちらの状況を話してその上で色々聞いてみると、相談に応じてくれるようです。「検討するための時間をくれ」と言えば、そういう時間もくれる場合もあるようです。とはいえ、年単位は無理でしょうけど。
法人を設立したばかりの一人法人さんであれば、暫くは時間的猶予があると思います。まず事業を起動に乗せるのが先ですからね。
今回の記事、何かしら参考になれば嬉しいです。